ぼくはきみを抱きしめたままきみから離れた

ぼくはきみから離れたくなかったのに 春の日だまりのなかで 微笑むきみを 胸の奥に 大切にしまって ぎゅっと抱きしめたまま きみから離れた

約束

雨がボンネットをやさしくたたく 子守唄を聞いているかのように 助手席で眠っている この娘を幸せにすることが キミとの約束だったような気がして 僕は雨の空気を 深くすいこんだ

さよなら

改札口の向こうにいるきみに さよなら と大きな声でさけんだ まわりにきこえる大きな声で なぜか大きな声で きみはペコリとおじぎして 階段をかけ上がって行く

雨のにおい

学校の帰り道雨が降ってきた 君は濡れて帰ろうかなと言っていたずらな微笑みを僕にむける 雨のにおいが僕らをつつむ 君はどうしていつもそうなんだい?

風に向かって歩いてゆく

好きだよ と伝えても 君はさわやかに微笑んで 風に向かって歩いてゆく 手をつないでも その必要があったかのように 君はさりげなく 放してしまう いつもそばにいるのに 君は遠く未来をみている